レポート





舞台「コースター」。
東京公演は10月11日から21日までですね。
そのあとは地方公演が続きますが。
富山観に行きたいなぁ。
仕事で物理的に行けないんですが。
ま、とりあえず東京公演を見たので、それで書いていきますよ。
会場は青山円形劇場。
渋谷駅から程近い、けど青山方面だからけっこう人通りは少ない感じの場所ですよ。
こどもの国の中にあるのと、隣の青山劇場と、あと主演の西村さん始め出演者が
バラエティに富みすぎてるから、建物前に行っても何が目的で来てるか読めない感じでしたね。
むしろヤスヲタ完全アウェイな感じで。
客層的には40代以上が圧倒的に多かったですね。
でも若い女性もいたし、どう見てもヤスヲタじゃない年輩の男性もいたし、ホント客層は読めない感じでした。

劇場フロアでエレベータを降りると、壁という壁はみんなお花で埋まってましたね。
出演者の皆さんみんな満遍ない感じで。
やすすは若干少なかったかなぁ。

物販でパンフを購入。バーのメニューみたいな感じの作りで、外側に綴じ紐がついてて。
おまけにコースターがついてましたよ。

会場は…なるほど、円形だ。
ただし客席が。
半円型のステージと、残る半円が客席で、会場中央、円形にステージが少し張り出してて。
だから大きさの違う円を２個くっつけたみたいな形のステージ。
客席も円形だから、角度によって全然違う感じに見えると思います。
ホントは完全円形で360°客席って配置りたいなんですけどね。
そういう意味では客席半分くらい潰してるんですが。

ステージのセット配置はまさにバー。
手前側がカウンター、キッチンになっていて、酒棚、グラス棚、水道、ビールサーバー、
冷蔵庫に温蔵庫、レジと並び。
カウンターの席は４つくらい。
奥側には一段高く２人向い合わせのテーブルが２セット。
奥の壁はずっと棚になっててお洒落な花瓶やらBGM用のレコードとプレーヤーが並び。
トイレと物置のドアが２枚、コートを掛けるフックが数個。
右手側には上へ昇る螺旋階段、わずかな通路があって、店のドア。
地下のお店みたいです。
お洒落な雰囲気のバーですよ。


登場人物は以下の通り。
塩井（44）…本編の主役。泥棒。マスター（ニセモノ）
　　　　　　バーに忍び込んだものの、お客さんがやってきてしまい…。
中原（28）…客。イマドキの若者らしく、少々飄々としている。
　　　　　　近所のチェーン系ファミレスの支店長。
文重（22）…バーのアルバイト志望の少女。カクテルは一通り造れるらしい。
　　　　　　言動、時折見せるドスの効いた声、何やら秘密が…？
江藤（33）…週刊誌の記者。とある問題を追いかけている。
　　　　　　ずっとマスターを探していたようだが…？
真規子(40)…中原の上司で、中央のマネージャー。
　　　　　　バイトだった中原を救い上げたのも当時店長だった彼女らしい。
　　　　　　営業や接客マニュアルのチェックが厳しい。
窪田（30）…文重を追い掛け回す謎の男。ストーカーというわけではなく、普通に既知の模様。
　　　　　　何やら板ばさみの中間管理職の匂いが…。
若林（48）…表の顔は温和なサラリーマン、裏の顔は…。
野田（55）…マスター（本物）
　　　　　　職人気質で、言っては何だがあまりマスターらしくない。
　　　　　　休みの日も、毎日バーに訪れるらしいが、その理由とは…？


ジェットコースターのような波乱の人生？
それともコースターのような敷かれっぱなしの人生か？



塩井は使い込んだキーを差し込み、まんまとバーに侵入した。
じっとレジを見つめ、「さてと！」
その瞬間、一組のカップル（中原・真規子）が「やってますか？」
塩井「…いらっしゃいませ、どうぞ」
真規子「ほんとに大丈夫ですか？」
塩井「……もちろんです。これから準備します」
次の瞬間、アルバイト募集の張り紙を見たという娘（文重）が「雇っていただけますか？」
そこへ一人の記者（江藤）が「探しましたよ、マスター！」と登場。
行き着く暇もなく若林組・組長と若い組員が「ちょいと邪魔するよっ！」と乱入。
そして追い討ちをかけるようにホントのマスター（野田）が何事かと立ちすくんでいる…。


さて、こんな感じじゃ何が何やら分かりません！（ｗ
いつもの通り、ちょっと長めにしっかり書いてみますよ。




courster（コースター）
①遊園地などで、急な起伏のあるレールの上を走る乗り物。
②タンブラーやコップなどの下に敷くもの。コップ敷き。
③なりゆき任せの人。


夜の帳降りた静まったバー。
そこに微かに響く、鍵を外す音。
侵入者は足音を忍ばせ、ゆっくりと螺旋階段を降りる。
塩井はカウンターを乗り越え、ゆっくりと物色する。
魚肉ソーセージを歯で食いちぎりながら、懐中電灯で辺りを照らす。
レジを見つけ、ほくそ笑むが、中にお金はほとんど入っていない。
何か金目のものはないかと辺りを探してみる。
本格的に探すために上着を脱いで手近に置いたところで。

店のドアが開き、それを知らせる鐘が響く。

ドアに鍵を掛け直していなかったのだ。
痛恨のミス。
咄嗟にカウンターに臥せて隠れる塩井。
しかし入ってきた二人は「やってないのかな」などと言いながら階段を降りてくる。
客だ。
真っ暗な店内、電気を点けられ、「誰かいませんか！？」と声を掛けられる。
見つかったら終わりだ。現行犯、逃げ場はない。
そしてカウンターの中を覗かれたら見つかってしまう。
…手段は一つしかない。

「…いらっしゃいませ」

「ほら、やっぱり開いてた！」
「さっきから何回も呼びましたよね！？」
「…すいません、お通しを作るのに集中してたので」

マスターになりきろう。
そして、適当なところで逃げよう。
この客が残っていたら自分の侵入した形跡も消えてくれる。

―コースター。

―その場のなりゆきに任せる人。

そして客からのリクエストやらツッコミにその場しのぎで次々対処していく塩井(マスター)。

「メニューください」
(やべっ…どこだどこだ…カウンターの下にないぞ！)
「…当店にはメニューはございません！客のどんなリクエストにも応えられてこそのプロですから！」
数秒後、メニューを発見し、見えないところに隠すマスター。

「カッコいい…！とりあえず生二つください」
(ビール…！？)
まずコックを捻ってもビールが出ない。
サーバーとビール樽が繋いでなかった。
出してみるも泡しか出ない。
…捨てる。
「えっ、捨てちゃうんですか！？」
「…当店では、一度ビールで洗ってからお出しすることにしています！」
もう一度注ぐ。
半分以上泡。
「……お待たせしました、生ビールです」
「ほとんど泡だし、泡の量違うんですけど」
「…男性と女性では好む泡の量も違いますので、もっとも人気のある量でお出ししています！」
普通に出すのが下手なだけ。

「この店！おしぼりもないの！？」
「…当店では、お客様からの要望がない限り、おしぼりは出さないことにしています」
「どうして？」
「……いきなりおしぼりを出すというのはお客様の手が汚れていると決めつけるということであり、
　そんな失礼なことは当店では致しておりません！」
いや、あなたさっき土足で二人がいる辺り登りましたよね？

「BGMはないの？」
「…当店では、最初の一杯をお飲みいただく間、音楽は掛けないことにしているのです」
「どうして？」
「…どんな音楽でも聴覚を使うと味覚に影響が出るのです。
　例えばモーツァルトと小林幸子を聴きながらでは味覚にかなり差が出るのです」
おもむろにレコードでジャズをかける。

一歩ずれた、しかしどこか理にかなったマスターの主張に感動する中原と真規子。
そのまま盛り上がって雑談を始める二人。
チャンスだ、逃げるのは今しかない！
階段を一歩上ろうとしたマスターは階段を降りてきた客と鉢合わせる。

「探しましたよマスター！」
妙に馴れ馴れしい男だ。
彼、江藤はずっとマスターを探していたのだという。
中原と真規子が理由を尋ねると、なんとこのバーのマスター、
この周辺の大規模開発の反対運動のリーダーなのだとか。
開発が進めばもちろんこの店も潰されてしまう。
反対運動をしている人々の暮らしを取材する雑誌記者、それが江藤の正体だった。
是非取材をさせてほしいと頼み込む江藤。
しかしマスターにとっては冗談じゃない。
写真など撮られるわけにいかない！

「お断りいたします」
「どうして！？開発を止められるチャンスですよ！」
「…私にとって最も大切なのはお客様に極上の一杯をお出しすること。
　例えこの店がなくなってしまったとしても、最後の一瞬まで最高の一杯をお出しして
　お客様に楽しんでいただくことこそが最高の反対運動だと信じています！
　あなたの力が必要なときはすぐに連絡いたします。ですから、取材だけは…！」
感動する中原と真規子、そして江藤。
…まぁ、そんな名演説を、グラスやらレコードを不自然なまでに袖で拭って指紋を拭き取りながら
やっていたのでは台無しですが。

「しょうがないですね…ビールください」
「はぁ！？」
「心配しないでください、もう客ですから」
どうやら腰を落ち着けることにしたらしい。

泡だらけのビールを注ぎ、BGMを止める。
「…無音で、お楽しみください」

どうやら骨董にも造詣があるらしい江藤。
店内の花瓶の目利きを始める。
数十万の価値があるという花瓶に目の色が変わるマスター。
江藤から花瓶を取り返すと、店からさりげなく逃亡しようとするマスター。
しかしまたしても螺旋階段で鉢合わせる。

「あのっ！私ここでアルバイトしたいんです！」
階段を降りてきたのは若い女性(文重）。
カクテルは一通り作れるというが、流石に人を雇ったりしたらややこしいことになってしまう。
マスターは履歴書を見もせずに突き返す。
うな垂れながら帰っていく文重。

「せめて面接ぐらいしてあげればいいのに…マスター、ダイキリください」
（だ、だいきり…カクテル…？）
「……待ちなさい君！若い子がそんなにあっさり諦めてはいけない！降りてきなさい！」
慌てて文重を呼び止めるマスター。
「面接をやるのか！」と盛り上がる店内。

「…きみ、ダイキリを作ってみなさい」
「なるほど！ダイキリを作ればバーテンダーの実力が分かるといいますからね！」
いや、単に注文されたから。
嬉々としてカウンターに入り、カクテルを作り出す文重。
ダイキリの作り方を観察して覚えるマスター。
いざシェーカーに入れて振りだす文重。
「…振りが甘いな…貸してみなさい」
中腰がに股、右腕をまっすぐ真横に伸ばして顔は正面、そんな体制でサンバのように
小刻みに全身を揺らしてシェーカーを振る。
「……お待たせしました、ダイキリです」
「なるほど！振り方によって味が全然違うんですね！」
またもや感動する店内。
「………きみ、今日、今から働けるなら雇おうじゃないか」
「はい！よろしくお願いします！」
かくして本物のマスター不在のまま、アルバイター文重が誕生した。

落ち着いた雰囲気で雑談を始める店内に中原の悲鳴が。
彼女が真規子に告げられた衝撃発言、「クビ」。
彼は開発の煽りでファミレスが潰されてしまうため、職を失ってしまうのだ。
メソメソ泣きながらボトルと氷を頼み、ヤケ酒を始める中原。
こんなところにも大規模開発の煽りは及んでいるのだ。

と、そこへ飛び込んで慌しく階段を駆け下りてくる一人の若い男。
「お嬢！探しましたよ！頭も心配してます！帰りましょう！」
「イヤよ！パパは心配なんて絶対してないもん！…帰んな！！」
いきなりドスの効いた声を上げだす文重。
すごすごと引き下がる若い男こと窪田。
というか、豹変した文重に軽く引く店内。
慌てて取り繕う文重。何やら家庭に秘密があるようだ。
聞けば昔から父親が静かに飲んでいる姿が好きで、いっしょに連れてきてもらったりして
ゴハンを食べているうちにバーが好きになったんだとか。
そんな話に感動する店内。

と、そこへ窪田が戻ってくる。
「マスター、ちょっとちょっと頼みがある！　これでお嬢をクビにしてほしいんだ！
　まずいんだよ！お嬢にここで働かれてると！」
窪田が手渡したのは封筒に入った札束！目の色が変わるマスター。
「…分かりました」
衝撃発言に目を丸くする文重・江藤・真規子。

「…私が出て行きます」
「マスター、それじゃ意味が分からない！お嬢を首にしてくれって言ってるんだ！」
「……私は自分が認めた人間しか雇わない、彼女は将来この店を任せられる逸材だと確信した！」
「…チッ、また来る！」
また慌しく店を飛び出していく窪田。
お金をどさくさに受け取ろうとしたマスターはまたもや見事に失敗。
「マスター…！ありがとうございます！」
文重に熱いまなざしを向けられて照れながら、カクテルをがに股でシェイクするマスター。

文重が涙を拭いて顔を洗いに席を外した間にまたまた一人の初老の客が。
少しマスター役が楽しくなってきたマスター。
他のお客も親しげに話しかける。
しかし客がおもむろにちらつかせたスーツの龍の刺繍、金にギラギラ光るネクタイに店内は凍りつく。
男は暴力団、しかも若林組の組長だったのだ。

「娘を人質に開発を止めようとするとは随分なやり口じゃないですかい？」

そして若林は大規模開発を推し進めるリーダー格。
マスターの胸ぐらを掴む若林。
このままでは逃げるどころか、店が潰れるどころか、東京湾に沈められてしまう！

「パパやめて！マスターはいい人なんだから！」
戻ってきた文重が必死に若林、父親を止める。
「文重、どうしてこの店なんだ！？バーで働きたいなら、新しいお店をいくらでも作ってあげるのに！」
「そういう考え方がイヤなの！パパはいつもそうやって道を勝手に作るんだから！」
「貴様か！娘に妙なことをふかし込んだのは！」
「パパやめてってば！」
「やめなさい！大の大人が大声上げてみっともない！」
さらに登場した客と思しき初老の謎の男性に諌められ、その場は一瞬静まり返る。
そこへ再び店内に戻ってきた窪田。
手には大規模開発反対を掲げる旗やらポスターやら。
「片っ端から剥がしてきました」と得意げな窪田。
激昂する謎の男性。
売り言葉に買い言葉で店内はもうパニック状態。

「パパは勝手だよ！パパのせいで仕事を失う人がいるんだよ！」
「しょうがないだろう、それがパパの仕事なんだから」
「貴様、お嬢に妙なことを吹き込みやがって！」
「やるなら先にボクをやってください！どうせクビになる身…もうどうなったっていい！」
「中原くん落ち着きなさい！」
「マスター、何とかしてくださいよ！」

思いっきり矢面に立たされるマスター。
「いがみ合ってばかりで、なぜ話し合おうとしないんだ。人間はお互いに理解することで変われるというのに。
　こういう話がある。警備会社を首になったある男が、バーに忍び込んだ。そこへお客さんがやってきた。
　思わずその泥棒は『いらっしゃいませ』と言ってしまい、マスターのフリをした」
自分の身の上を語りだすマスター。
そんなバカな話があるのか、と笑っていた客たちも次第に話しに引き込まれていく。
その偽マスターは、月並みだけど客に『美味しい』と言われて仕事が楽しくなり、生まれ変われたのだという。
「…その泥棒は、どうなったんですか？」
「さぁ…許されて、どこかに今も居るんじゃなかったかなぁ？
　人は変われるものなんだよ。話してみれば、きっと分かる」

「そいつは違うな！その泥棒だって、仕事をクビになって楽な道に走ろうとして泥棒なんてやったんだろ？
　人間はそんな簡単に変われないんだよ！」
せせら笑う若林。
バーの中に沈黙が流れる。マスターも何も言い返せない。
確かに、今後自分も同じ事を繰り返さないとは言い切れない。

「…話は、終わりましたか？」
改めて窪田に羽交い絞めにされるマスター。
このまま東京湾の海の藻屑になってしまうのか！？

「待ちなさい！そのマスターはもう…余命が長くないんだ！」
謎の男性がマスターをかばおうと必死で声を張り上げる。
「どれくらいなんだ…？」
尋ねる若林の背後で必死でジェスチャーを送る謎の男性。
「…４，５年…」
「意外と長いな！」
ジェスチャーを読み取るのに失敗したらしい。
「それだけじゃない！この店でずっと娘が来るのを待ってるんだ！
　マスターは別れた女房が連れて行った娘が成人してこの店に来るまで店を閉められないんだ。
　…それが、ちょうど今年だ」
再度フォローを投げた謎の男性に、若林の手が止まる。
後押しをするように「パパに私の作ったカクテル飲んでほしいの」と声をかける文重。
「…お前の作った酒など飲めるか！」
若林は突っぱねてしまう。
「じゃあ、私はもらおうかな」と謎の男性。
「じゃあボクも」「私も」「僕も飲みたい！」と次々に名乗りを上げる。
父親に飲んでもらいたかった文重は戸惑いの顔を見せる。が。
「私も手伝うから作りなさい！」
と拘束から解放されたマスターが声を張り上げる。

作って出されたカクテルを謎の男性は若林に「お先どーぞ」と差し出す。
他の面々からも文重のお酒…オリジナルカクテルの評判は上場だ。
戸惑いながらも、若林も一口、カクテルを飲んでみる。
あとは親子の問題だ。
無言でカクテルを啜る若林。

夜も更けてきた。そろそろ店も閉める時間に近づいている。

「おい窪田！エンジンかけとけ！」
「分かりました！」
渋い顔の若林に、窪田が店を飛び出していく。

「ねぇ君、僕の取材受けない？マスターに取材拒否られちゃったから代わりに。
　大規模開発の裏側で職を失った人、ってテーマで」
「いいけど…真規子さんに馴れ馴れしくしないでください！」
「だからさ、もう１軒付き合ってよ」
連れたって店を出る江藤・中原・真規子。

「すいませんマスター、今日は終電で帰らせていただきます」
「あぁ…またよろしく」
「お疲れ様でした！」
「…おかわり」
店を出ようとする文重に若林が声をかける。
「…君のカクテルだろう、作ってから帰りなさい」
「はいっ！」
マスターに教えられた、がに股全身シェイクでシェーカーを振り、カクテルを出す。
一息に煽った若林、今日の客全員分の代金よりも多いお金を渡しぼそりと呟く。

「うまかった…また来る」
「え？」
「人間、簡単に変わらないと言ったが…カクテル一杯で簡単に変わっちまった」
「じゃあ…大規模開発の件は……」
「…また、飲みに来る」
酔っ払ってふらつきながら、ゆっくりと階段を登って店を出て行く若林。
…マスター、とんでもない問題を解決しちゃったよ！

入れ違いにまたまた戻ってくる窪田。
「お嬢、頭が車でお待ちです。早く出てくるようにと」
「はい、じゃあマスター、失礼します。
　…ねぇクボちゃん、今度はクボちゃんも飲みに来てね、パパの居ないときに」
「…はいっ！」
２人もお店から出て行く。
これでもう、若林親子も大丈夫だろう。


店に残ったのは謎の男性…いや、本物のこの店のマスターと、マスターだった泥棒。
「…まったく、変な日だよ今日は！」
「申し訳ありません！」
「来てみたら大騒ぎだからビックリしたぞ」
「何も盗ってません！あ、魚肉ソーセージは１本食べちゃいましたけど！」
「…まぁ、助けられちまったがな、面白い話のネタもできたし」
「…あの、余命わずかっていうのは…本当なんですか？」
「ありゃウソだ。…まぁ、娘の話は本当だ」
「え？」
「だから店が休みの日でもつい来ちまう…」
「そうだったんですか…」
「…行けよ、見逃してやるから」
深くお辞儀をして、ダッシュで店から出て行く泥棒の塩井。
かと思ったら、すぐにまた店の扉を開く。

「…あの！表でアルバイト募集のチラシ見たんですけど！」
「…ホント変な奴だなあんた」
「…はい、よく言われます」
「まぁいいや、座んな」
「え？」
「面接やっから」
「あ…すいません、ちょっと忘れ物を思い出しました、すぐ戻ってきます！」
「また店から飛び出していく塩井。
やれやれ、と肩をすくめる本物のマスター。
カウンターから酒を持ち出し、ロックでグラスに注ぎ、一気に飲み干す。
あの泥棒、懐中電灯忘れていきやがった。
遠くからは、サイレンの音が聞こえてくる。

と、店のドアが開いた。

入ってきたのは、アルバイト志望の泥棒塩井か、それとも―――




とまぁ、こんな感じで。
正直、文章だと物語の臨場感の半分も伝わってこないなぁ、自分のこの文書だと。
とりあえず、非常に面白かった！
正味２時間ちょっと切れるくらいの舞台だったんだけど、ほとんど笑いっぱなし。
１分に１回以上の比率でネタ仕込んでたからなぁ。
テンポも良かったし。
泡だらけのビールを注いだあと、無言で客席に見せるところとか、テンポと間をよく分かってらっしゃるし。
あとはバーの話だけあって大人のジョークがけっこう多かったしね。
だから逆にドラゴンボールネタとか、細かすぎて伝わらないネタがいくつかあって、
その辺好み分かれるんだろうなぁ、ってのはいくつかありましたが。
ちなみにおいらは２個。残りの１００以上の小ネタは大体ストライク。
んー、テンポは良かったけど、シナリオにスピード感があったかというと少々疑問が。
後半、クライマックスに向けて盛り上がりは見せてるんだけど、物語全体のスピードとしては
速度は上がってない感じでしたから。
終盤はネタ比率少し減らせばもう少し疾走感とカタルシス強まったのかなぁ、と。
そこだけ個人的には少々残念。
あと、螺旋階段を全体的に慌てて登りすぎ。
セットとはいえ、ギシギシ揺れてるのは見ていて少々怖かったし。
でも気になったのはそれくらいで、面白い舞台でしたね。
おいら多分今年になって喜劇系舞台では一番楽しかったかもしれないなぁ。
西川くんのハゥ・トゥ・サクシードと甲乙つけ難い感じですが。
個人的には、これで6800円なら満足な出来かな、と思ってるのですが。
あー、地方公演観たいな。コメディ系は胃に重たいのが多いんだけど、珍しく２回観てもいいと思ったし。
多分DVD出ると思うんで、これは買いですね。
楽しい舞台でした。
拙い文章で伝えきれているか分かりませんが、大体そんな感じでした！
ネタをどこまで表現できるか悩んで、こんな風になっちゃいましたが。
読んでくださった皆様には感謝しつつ。
以上！「コースター」レポでした！


観劇日：2007年10月14日昼
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